この記事の概要
・HubSpotのジャーニーレポートの概要がわかる
・カスタマージャーニーの概要とカスタマージャーニーマップがわかる
・ジャーニーレポートを利用できるHubSpotのプランがわかる
・ジャーニーレポートの作成方法やメリットがわかる
・ジャーニーレポート作成時の注意点がわかる
HubSpotのジャーニーレポートについて解説する前に、カスタマージャーニーとカスタマージャーニーマップについて確認しておきましょう。
カスタマージャーニー(CustomerJourney)とは、顧客がある製品やサービスを認知してから、購買、利用、さらにはリピートやファン化に至るまでの一連のプロセスや体験のことを指します。つまり、顧客視点で見た「購買行動の旅路(journey)」を表しているのです。
このカスタマージャーニーには、以下のようなフェーズが含まれるのが一般的です。
・認知(Awareness):商品やサービスの存在を知る
・興味・関心(Interest):より詳しく情報を集める
・比較・検討(Consideration):他社製品と比較する
・購入(Purchase):実際に商品を購入する
・利用(Use):商品・サービスを使う
・リピート・推奨(Loyalty/Advocacy):再購入や他者への紹介をする
このような顧客の購買行動は、以前から「購買の7行動」や「AISAS(アイサス)」、「AIDMA(アイドマ)」などというモデルで表されてきたものです。
※AISAS:Attention(認知・注意)、Interest(興味・関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)
※AIDMA:Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、 Action(行動)
マーケティング施策を立案する際は、このカスタマージャーニーを理解することで顧客の心理やニーズに合わせた最適なアプローチを設計することができます。
カスタマージャーニーマップ(CustomerJourney Map)は、上記のカスタマージャーニーを視覚的に図式化したものです。顧客がどのような接点(タッチポイント)を経て商品やサービスに関与していくかを、時系列で整理・可視化したものになります。
カスタマージャーニーマップに含まれる主な要素は、以下のようなものです。
・フェーズ(段階):認知→検討→購入→利用など
・タッチポイント:ウェブ広告、SNS、店舗訪問、メールなど
・顧客の行動:検索、比較、購入、レビュー投稿など
・顧客の感情・ニーズ:各フェーズでの不安、期待、満足など
・社内部門との関与:マーケティング部門、営業、カスタマーサポートなど
カスタマージャーニーマップは、上記のような顧客と関与するポイントを、時系列に整理しマップのようにプロットしていきます。カスタマージャーにマップは、作成することで以下のような効果が得られます。
・顧客の視点に立った施策立案が可能になる
・タッチポイントごとの課題や改善点を発見できる
・部門を横断した顧客体験(CX)向上の施策が共有しやすくなる
HubSpotでは、カスタマージャーニーマップを直接作成する機能はありませんが、「ジャーニーレポート」機能を使って実際の顧客行動をデータで可視化できます。 ※7種類のカスタマージャーニーマップ・テンプレートは提供
HubSpotのジャーニーレポートとは、HubSpot上で顧客の行動プロセスを可視化し、特定の「イベント」(たとえばウェブページの閲覧やフォーム送信、Eメールのクリックなど)がどのような順序で発生しているかを把握することができる機能です。
ジャーニーレポートでは、指定したイベントをトリガーとして、その前後に発生したイベントを時系列で追跡・分析することが可能です。これにより、顧客がどのようなタッチポイントを経由してコンバージョンに至ったか、あるいはどの時点で離脱してしまったのかをデータに基づいて分析することができます。つまり、この機能は、マーケティングやセールスなどのチームにとって、顧客体験を改善するための貴重な判断材料を提供してくれるのです。
HubSpotのジャーニーレポートは、MarketingHub(データソースはコンタクト)とSales Hub(データソースは取引)、Service Hub(データソースはチケット)で利用することができますが、プランはEnterpriseに限られます。HubSpotには無料の他に3つのプラン(Starter、Professional、Enterprise)がありますが、Enterpriseは最も上位のプランです。
ジャーニーレポートを作成し活用することで、以下のようなメリットが得られるようになります。
Ø 顧客の行動パターンを可視化できる
ジャーニーレポートでは、顧客が最終的なコンバージョンに至るまでにたどった一連のイベントやタッチポイントを可視化できます。これにより、どのコンタクトチャネルやコンテンツが効果的だったのかを定量的に把握することができます。
Ø ボトルネックの特定と改善が可能
顧客が途中で離脱してしまうタイミングやポイント、アクションがスムーズに行われないフローなどを発見しやすくなります。これにより、マーケティングファネル(顧客が製品やサービスを認知してから、最終的に購入するまでの段階的なプロセス)の最適化が可能になります。
Ø A/Bテストの精度向上
A/Bテスト(エービーテスト)」とは、2つ以上の異なるパターンを比較し、どちらがより高い成果を生むかを実際の顧客行動で検証する手法です。この分析手法は、HubSpotの有料プランに含まれています。ジャーニーレポートは、異なるキャンペーンやタッチポイントの効果をイベントの連鎖を通じて比較することができるため、A/Bテストの実行結果をより深く分析することができます。
Ø 社内の共通認識が生まれる
マーケティングやセールスなど、複数の部門間で顧客体験に対する共通認識が醸成され、施策の一貫性を保ちやすくなります。
HubSpot上でジャーニーレポートを作成するには、以下の手順に従って作成を進めます。
1.HubSpotアカウントで、[レポート]>[レポート]の順に進みます。
2.右上の[レポートを作成]をクリックします。
3.[レポートをゼロから作成]セクションで、[カスタマー ジャーニーレポート]を選択します。
4.ジャーニーレポートをゼロから作成することも、サンプルレポートを使用することもできます。
5. ジャーニーレポートをゼロから作成する場合には、データソースを選択(Marketing Hubはコンタクト、Sales Hubは取引、Service Hubはチケット)後、左側のパネルから[イベントを選択]をクリックし、各ステージのイベント(フォーム送信やページの閲覧、Eメールクリックなどを最大7つまで)を選択します。
6. 詳細な分析を行うには、プロパティー内訳の分類条件アイコンをクリックします。ここから1つのジャーニーレポートに、最大5つの分類条件を追加することができます。
7.ステージの設定が完了したら、[レポートを実行]をクリックし、右上の[レポートを保存]をクリックします。次の画面でレポートのアクセス権限を設定してから[保存]をクリックし、完成です。
ジャーニーレポートを作成・活用する際には、以下の点に注意することが重要です。
Ø データ量と精度に依存する
正確なインサイトを得るためには、十分なサンプルデータが必要になります。イベントが少なすぎると、顧客の行動に関する傾向が見えにくくなります。
Ø イベントの設定ミスに注意
イベントの順序や定義が正確でないと、誤った結論につながってしまいます。イベントの意味や設定方法については、チーム内で統一しておくことが重要です。
Ø リアルタイム性には限界がある
ジャーニーレポートは、過去のデータを分析するものです。リアルタイムでの行動分析には、別のツールや機能を併用する必要があります。
HubSpotのジャーニーレポートは、カスタマージャーニーを可視化し、より精度の高いマーケティング施策を展開するための強力なツールです。特にリード獲得からコンバージョンに至るまでの各ステージで、顧客がどのような行動を取っているかを定量的に把握できることは、戦略立案に大きなメリットをもたらします。Enterpriseプランへの加入は必要になりますが、ジャーニーレポートを活用してみてはいかがでしょうか。
株式会社ハレフルでは HubSpot や Salesforce の導入・運用支援 を行っております。初期設定や操作方法などから、自社にマッチしたサポートをご提案しており、CRMの導入は初めてという企業様も安心してご依頼いただけます。スコアリングをはじめ、HubSpotが有する機能についての相談や設定にも応じています。「自社にあったCRMを選定してセールスやマーケティングを効率化したい」「HubSpotの運用を依頼できる企業を探している」など、HubSpot導入に関する具体的な相談や、プランの選び方についてお困りの方は、ぜひ お問い合わせ からご連絡ください。